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2年後のわたしさんからのお手紙
埼玉県  20代  中性
医療  カウンセラー

2年前のわたしへ

2021年4月18日、日曜の夜にわたしは「ケアレター」というものに参加しています。
大学も、新卒の会社も医療やケアに何の関わりもなく、
まさか今自分がカウンセラーとして働くなんて思いもしませんでした。

すこし前から近辺整理をし、7階以上のビルやマンションがあればチェックし、
さすがに飛び込みは気がひけて通勤時はできるだけ線路に近付かないように
駅のホームのかべをさわりながら歩いていましたね。

結局あのとき勇気を出せなかった私はなんとなく生き延びて、いくつかの転職とニートを経て
心療内科のカウンセラーとして働いています。
1年ほど前から新型コロナウイルスが流行し、世界中でたくさんの人が亡くなったり、
回復して元気になったりしています。

39.5度の熱を出して自分が苦しんだとき、気持ち悪いのが、苦しいのが、とても嫌でした。
早く楽になりたい、と思っていましたよ。はうように病院に行き診てもらい、
しっかりもらった薬とポカリを飲んでベッドに横になってるとき、
「まだ全然生きたいんじゃん」とおかしくって泣けました。

コロナによる不況や、ライフスタイルの変化によるお悩み、
特に医療従事者さんたちのカウンセリングがぐんと増えました。
高齢の方をサポートする福祉の方たちもつらいし、
コロナだからと不安な中現場に立つ研修医の方たちもつらい。
お正月、GWと世間はお休みでも、自分をはじめ、まわりのお医者さんや看護師さんたちは
ひたすらがんばって働いているように思います。

23時頃クリニックを閉める頃には、コンビニしかあいていないですしね。
コンビニの弁当はおいしくて栄養価も高くて、朝から何も食べていない体によくしみわたりました。

周りの、少なくとも自分の知っている医療やケアに携わる人たちはもう充分頑張っていると思います。
それでもネットやテレビで日本の医療や方針に対する批判を見ると、黙って目をそらしたくなります。

病院嫌いで死にたがりで、人に本音を話すことが本当に苦手だったあなたは、
どうしようもないこともある中で少しでも関わってくれた人が
1日でも長く生き延びるように頑張ってるみたいですよ。

カウンセラーになって「レジリエンス」という言葉を学びました。
人はどんなに傷ついても、その人が本来持っている回復力を育てて活かして、
また立ち直っていけるみたいです。
ひとりひとりが持っている、その回復力のことを「レジリエンス」と言うようです。

実際に、長くて1年以上、短くて3か月、私のもとにさまざまな人が来て
語り、涙し、笑い、クリニックを卒業していきます。
昔サラリーマンをしていた時には想像もつかなかったひとの痛みを知り、
なんとかそのひとが「がんばらない」形で楽に、穏やかに過ごせるように、いろいろなことを勉強中です。

少しずつクライエントさんが殺していた自分をとりもどし、大切にしたい自分の姿を思いだし、
自分で自分を大切にする方法を学んでいく姿に、私もずいぶん元気をもらっています。
親の暴力も性被害もお金ほしさにやっていたいろんな働き方も、
「自分だけじゃなかった」ことを知りました。

みんな平気そうな顔をして、それぞれの痛みを抱えています。
そこに寄り添いケアするのが、今の私の仕事です。

生き延びてくれてありがとう。
今後また死にたくなっても、今の私はちょっとカッコいいです。
2年後の私より。

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